診療内容

 生活習慣病 

高血圧、糖尿病、高脂血症が代表的な生活習慣病です。これらの病気は食べすぎや運動不足という生活習慣や、肥満・体の中のインスリンというホルモンが効きにくくなった状態など共通の背景を持っています。

そして虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、心不全、脳卒中、腎障害の危険因子です。

 

治療はまず生活習慣の改善から始めます。つまり食事療法、運動療法、禁煙です。それでも病状が良くならない場合、薬物療法が必要になります。

これらの病気は決して高齢の方だけに発症するわけではなく、メタボリックシンドロームという内臓脂肪蓄積による動脈硬化が極めて発症しやすい症候群が中年の方で増加しており社会問題にまでなっています。診断基準は以下のとうりです。糖尿病、高血圧、高脂血症と密接な関係どころか共通部分があることがおわかりになると思います。

また正確な内臓脂肪量測定にはCTを用いることが推奨されており、当院のCTが役に立つと考えます。

 

メタボリックシンドロームの診断基準

 


 
ウェスト周囲径
男性≧85cm
女性≧90cm
  (内臓脂肪面積
男女とも≧100cm2)
 



 

 
高トリグリセリド血症
≧150mg/dl
    かつ/または  
 
低HDL(善玉)
コレステロール血症
<40mg/dl
男女とも
 
 
収縮期血圧
≧130mmHg
   または  
 
拡張期血圧
≧85mmHg
 
 
空腹時高血糖
≧110mg/dl

※CTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行なうことが望ましい

 

また非アルコール性脂肪性肝炎つまりnon-alcoholic steatohepatitisNASH)に対する関心がここ1~2年で比較的急速に高まっています。ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害とは異なる新しい肝臓疾患概念です。

日本では肥満人口の増加が明らかで、成人でも高頻度に肥満(体重指数:BMI>25)の存在が考えられ、これらの人びとにみられる脂肪肝や糖尿病、高脂血症などがNASHの発生母地といわれています。

アメリカでは肥満(とくに病的肥満)が医学的のみならず社会的にも問題を提起しており、人口の3%前後が本症に罹患しているとも推測されており、発症後経過もNASH症例の約50%が進行性で、10年間で20%が肝硬変に移行するとの報告があります。

 

高血圧とは140/ 90mmHg以上の血圧です。ただし診察室でのみ血圧が上昇する白衣高血圧やその反対の仮面高血圧などがありますが、家庭血圧が重要視され、平均135/85mmHg以上なら降圧療法を開始することになります。

食事療法は減塩、野菜・果実を摂ること、コレステロール摂取を減らすなどで、禁煙とアルコール制限も大事です。

運動は歩行、ランニング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を毎日30分程度が勧められています。

ただし虚血性心疾患がある方はこの限りではありません。降圧剤は各種あり、概ね利尿剤、自律神経(交感神経)抑制薬、カルシウム拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII(A-II)受容体拮抗剤に分類されます。

これらの薬はかなり長期にわたって内服することになるため抵抗感を持たれるかもしれませんが、長生きにつながることは事実なので、日常生活の注意点と適切な服用を守りましょう。

 

糖尿病はインスリン作用不足による高血糖状態の代謝疾患群です。

インスリンとは膵臓のβ細胞でつくられ、分泌されるホルモンで、ブドウ糖の細胞内への取り込み、エネルギー利用や貯蔵、たんぱく質の合成、細胞の増殖を促進するはたらきを持っています。

インスリンの分泌不足やインスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)体質が糖尿病の原因です。糖尿病の判定基準は早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上、75gブドウ糖内服負荷試験で2時間値200mg/dl以上、随時血糖値200mg/dl以上のいずれかが確認されることです。

糖尿病の治療は1型(膵臓のβ細胞の破壊による絶対的インスリン不足)と2型(インスリン分泌低下、抵抗性)で異なります。前者は直ちにインスリン注射が必要です。

後者には適切なエネルギー摂取と食品種類と規則正しさが主体の食事療法、有酸素と無酸素を適度に合わせた1日160~240キロカロリー消費エネルギー程度の運動療法があります。それでも代謝コントロールが不良の場合は薬物治療が必要です。内服薬は各種ありますが、スルホニル尿素薬、フェニルアラニン誘導体、ビグアナイド薬、チアゾリジン誘導体、α-グルコシダーゼ阻害薬が代表的です。

日本では糖尿病とその予備軍を併せた人口は1620万人(平成15年厚生労働省調査)で、いまや国民病となっていますが、治療薬の開発により早期に治療を開始すれば合併症は予防できるようになってきています。

健診などで糖尿病の疑いを指摘された方は必ず診察を受けて下さい。

 

高脂血症とは血中コレステロール、中性脂肪のうちコレステロールと中性脂肪のいずれかあるいは両方が増える状態です。

血液中では脂質はたんぱく質と結合しておりリポ蛋白と呼ばれます。

リポ蛋白はカイロミクロン、LDL、VLDL、IDL、HDLに分類され、高LDL(悪玉コレステロール)血症、低HDL(善玉コレステロール)血症、高中性脂肪血症は狭心症や心筋梗塞の最も重要な危険因子の1つです。

ただし甲状腺機能低下症や糖尿病らの病気による続発性高脂血症もありますから注意が必要で、その場合原疾患治療が優先されます。

高脂血症に対して食事療法や運動療法を3ないし6ヶ月行い、改善がなければ薬物療法を行ないます。

くすりにはスタチン、フィブラートらがあり、臨床試験でそれらのくすりによる虚血性心疾患発症予防、死亡率低下作用が確認されています。

ただし妊婦さんへの投与や上記ふたつの薬剤の併用は筋肉異常の副作用の可能性があるため禁忌(服用禁止)です。